【記事解説】「森永卓郎が陥った〈相続地獄〉」(婦人公論)

「親にかかる介護費は親の貯金から払ってもらうべき」……寄与分はなかなか認められません

「父の死後、貸金庫を開けて呆然 大正生まれの父は昔気質の男で、家のことはすべて母任せ。靴下さえ母にはかせてもらっていました。そんな父を遺して、2000年に母が74歳で急逝。生活能力がない父を放っておくわけにはいきませんでした。弟と相談した末、埼玉県所沢市のわが家で引き取ることに。ふり返るとこの同居が、その後に続く介護と相続地獄の始まりでした。(中略)

 わが家に引っ越してきてからの父の生活費はすべて私が払っていました。介護施設の費用は当初は父の口座から引き落としていたものの、毎月30万円以上はしますからすぐに底をついた。父に「ほかに預金はないの?」と聞いたところ、たくさんあるけど、銀行名も通帳のありかも「わからねぇ」と。 父は、頭はしっかりしていた。  

 恐らく、通帳などの管理は母任せで関心がなかったのでしょう。あげく、「卓郎、おまえ稼いでんだから、とりあえず払っといてくれ」と。たしかにその頃、私は著書が売れていたため、介護施設の費用を払い続けることができた。でも、これが大きな間違いでした。(中略)

 もう1つ、相続で地獄を見るのが遺産分割。うちの場合、法律上は私と弟で2分の1ずつです。弟は、それでいいと言ってきました。 でも、私と妻、そして息子たちは、父の世話をしたし、お金も使った。「それで折半はおかしいよね?」と私は反論。弟も私の言い分をわかっているのですが、「いいじゃん、兄貴は稼いでいるんだから」と(笑)。父を介護した妻も、釈然としない様子ではありましたが、もともとお金には興味がない人なので報酬を要求しなかったし、弟と私はもともと仲がよく、揉めたくなかったので折半で合意しました。

ただし、これは森永家の場合です。遺産分割をめぐって親族が争うケースは少なくありません。介護をした証拠を残すためにも、介護にかかった諸経費や介護の行動記録をノートなどに記し、領収書を貼っておくことをおすすめします。」
(引用ここまで)

遺産分割の際に問題となる「寄与分」に関する記事です。寄与分をめぐる争いで「地獄を見る」という表現は決してオーバーなものではありません。

相続は,民法という法律に詳細な規定があります。相続人の範囲,順位,相続分等の定めに従って手続きが進められます。

「寄与分」の制度とは、相続の遺産分割や遺留分減殺の場面において、被相続人の財産の維持したり、増加させるのに貢献した人に対して、法定相続分どおりに財産を分配してしまうと他の相続人と不公平が生じてしまう場合に、その貢献に見合った割合にする相続制度です(民法904条の2)。

<寄与分の特徴>
①相続人間で話し合いで決めることが原則。現実には,なかなか話し合いがまとまらない。
②話し合いがまたまらない場合,家庭裁判所の調停(審判)で解決。
  もっとも,家庭裁判所では非常に認められにくい。
③具体的な証拠が求められる。

(遺産分割調停のイメージ。裁判所ホームページより)

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当事務所の大隅愛友弁護士が担当した案件で,寄与分が争点となったケースで作成した書面です(一部。改変あり)。専門的な知識,法廷技術と,相当な労力が必要となることが理解できると思います。

①介護型の寄与分(数百万円)が認められた事例(東京家裁)
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②相手方の介護型の寄与分(5000万円)を0にできた事例(福岡高裁,長崎家裁)

寄与分は,当然に認められるものではなく,様々な事情を前提として,例外的に認められる制度として理解することが必要です。

寄与分を正しく理解しないと,子ども同士の不平等感が出てしまったり,期待と異なる結果となり,兄弟間の仲が悪くなる原因となってしまいます。

親の介護費用は親の費用から出してもらう,または,子ども間である程度,平等に負担する。争いになってしまった場合には,専門的な判断が必要となるため,弁護士へ相談することがよいでしょう。

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