Q 私は先月、長年連れ添ってきたパートナー(内縁の夫)と死別しました。私たちは籍は入れずに事実上の夫婦として生活してきました。遺言はありませんでした。
私は内縁の夫の財産を相続することができるか相談させてください。
A 弁護士による回答:今回の相続のご相談は、「内縁の配偶者の相続問題」といわれるケースです。結論的には現在の法律、裁判制度においては、内縁の配偶者の方は、相続人として相続することが認められていません。
よって、亡くなられた夫の方に、法律上の相続人(子、孫、親、兄弟姉妹等)の方がいらっしゃる場合、相談者の方は相続することができません。
なお、亡くなられた夫の方に相続人がいない場合、例外的に特別縁故者として、相続が認められることがあります。
弁護士による相続解説:内縁の配偶者の方は相続人にあたらないため、内縁の配偶者の方が相続財産を受け取ることができるかどうかは、「遺言」の有無によって変わります。
遺言がある場合にはそれに従い、無い場合には、民法で定められた相続人(法定相続人)が取得します。法定相続人には優先順位があります。具体的には次のとおりです。
1 妻と被相続人の子供(胎児も含む)
2 子供がいない場合は,被相続人の父母(または祖父母)
3 父母・祖父母が亡くなっている場合は,被相続人の兄弟姉妹
※同順位の相続人が複数いる場合には、人数に応じて按分されます。
このように法定相続人の中に、「内縁の配偶者」は含まれていません。
内縁の夫婦とは、自分の氏(姓)を変えたくない、相手方の戸籍に入るのが嫌など様々な理由から、正式な婚姻という形式をとらずに、社会生活上、夫婦として生活することをいいます。
内縁の配偶者については(民法の明文に規定はないものの、法律上の夫婦同様の社会的実態から)、離婚や年金など各種の場面においては、正式な夫婦に準じるものとして保護がされるようになっています。
もっとも、ご相談のケースである「相続」の場面においては、上記の民法に相続人としての定めがなく、また最高裁判所も内縁の配偶者に相続権は認められないと示しています。
よって、本件では、内縁のパートナーの相続は認められない可能性が高いです。
ただし、亡くなられたパートナーの方に相続人がいない場合には、家庭裁判所へ申し立てることにより、「特別縁故者」として相続財産の分与が受けられる可能性があります(民法958条の3)。
また、内縁のパートナーの方へ相続財産を遺贈するという内容の遺言が残されていたような場合には、相続財産を取得することができます(「包括遺贈及び特定遺贈」(民法964条)、「死因贈与」(民法554条))。このように、内縁関係にある方は、生前に遺言の作成について検討することが重要となります。
内縁関係のある方の相続は上記のように複雑なものになることが多いですので、生前または亡くなられた後に、弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
弁護士法人ベストロイヤーズ法律事務所(千葉)
弁護士大隅愛友(おおすみよしとも)