特別受益
1 特別受益のよくある悩み
遺産相続に納得していない方は「特別受益」を主張するとよいでしょう。
例えば、兄だけが親からの金銭的な援助を受けていた場合、他の兄弟姉妹は遺産分割に不満を持つのは自然なことです。
- 大学や留学の費用を出していた
- 借金の肩代わりをしていた
- 事業資金として多額の援助をしていた
こういったケースでは、特別受益を主張すればより公平に遺産を分割できます。
この記事では、特別受益について解説し、相続で起こる問題にどう対処すればいいかを紹介します。
2 特別受益とは
特別受益とは、亡くなった人(被相続人)から生前に一部の相続人だけが受けた贈与や特別な利益のことを指します。
例えば「自分は高校までしか行かせてもらえなかったのに、兄は大学進学していた(親が学費を全額払っていた)」などのケースでは、特別な利益を受けていたと言えます。
このような贈与も遺産と合わせて計算し、全ての相続人に公平に分配されるべきですよね。
特別受益も含めて再計算することを「特別受益の持ち戻し」といいます。
特別受益は相続人の間で公平な遺産分割を行うために重要なのです。
3 特別受益を主張する流れ
特別受益を主張する際の流れを簡単にまとめました。
単に「特別受益があった」と主張しても認められないので、行動に移す前にすべきことを確認しておきましょう。
3-1 贈与に関する資料の収集
贈与を証明するために資料を集めます。
- 契約書
- 日記
- メール
- 預金通帳
- 銀行の振込依頼書の控え
- 登記事項証明書
- クレジットカードの利用明細
- 学費の領収書、学費納入証明書
資料が不足していると、特別受益を証明するのが難しくなる可能性があります。
「いつ、誰に、何を(いくら)」贈与したのか明確に分かるものを集めておきましょう。
3-2 遺産分割協議での主張
相続人同士で行われる遺産分割協議において、特別受益に該当する贈与の事実を主張します。
ここで証拠が重要になってきます。
証拠が揃っていれば、協議はスムーズに進む可能性が高まります。
協議で合意に至らない場合は遺産分割調停や遺産分割審判に進むことになります。
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トラブルを深刻化させたくないなら、早めに弁護士へ相談してください。
3-3 特別受益の持ち戻し
特別受益が認められると、相続財産に特別受益分を加算し、法定相続分に従って再分配します(特別受益の持ち戻し)。
特別受益によって優遇を受けた人の相続分が減り、他の人の相続分を増やして、公平を図るのです。
ただし、被相続人が遺言書などで特別受益の持ち戻しを免除する意思表示をしている場合は行いません。
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4 特別受益を弁護士へ依頼するメリット
特別受益を認めさせるには資料取集や交渉などが必要で、自分ひとりでやるとなると精神的なストレスが大きいもの。
ここからは特別受益の問題を弁護士に依頼するメリットを解説します。
4-1 弁護士照会によって証拠収集がスムーズ
特別受益を主張する際、証拠が不足していると主張が認めてもらえない可能性があります。
弁護士は「弁護士会照会」という手続きを通じて、被相続人の預金通帳の入出金記録などの重要な証拠を手に入れることができます。
特に「特別受益を認めさせたいけど証拠が見つからない」「実家が遠方で、証拠探しのために訪問するのが難しい」といったケースは専門家へ依頼した方がよいでしょう。
4-2 調停・審判で有利な立場に立てる
特別受益の証拠を集めたとしても、相手は相続金額を減らしたくないので反論するでしょう。
その場合は調停や審判に進みますが、裁判官を説得するための証拠の選定や法的な主張の組み立てを行うのは難しく感じると思います。
弁護士に委ねれば、専門的な知識を踏まえて事実を主張してくれるので、有利な結果を獲得しやすくなります。
4-3 兄弟間のトラブルを回避できる
相続に関する話し合いはどうしても感情的になってしまうもので、これまで仲の良かった兄弟姉妹でもトラブルになりがちです。
「相続で揉めたくない」「親の死後、兄弟が疎遠になるなんて悲しい」と感じているなら弁護士へ相談しましょう。
弁護士を通じて協議を進めれば、法的な根拠に基づいた冷静な議論が可能になり、家族関係の悪化を避けられるでしょう。
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5 特別受益に関してよくある質問
5-1 どのようなものが特別受益にあたりますか?
特別受益には以下のようなものが含まれます。
- 婚姻時の持参金
- 開業資金
- 不動産の贈与
- 車の贈与
- 高額な学費の支払い
- 借金の肩代わり
なお、特別受益として認められないケースもあります。
証拠を集める前に、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
5-2 証拠を集めるのが面倒なのですが、なくてもいいですか?
遺産分割協議で相手が特別受益を認める場合、証拠は必要ありません。
しかし実際は、特別受益を認めない(反論してくる)ケースがほとんどです。
調停や審判で特別受益の有無を争う際、証拠がないと特別受益を主張するのが困難になります。
5-3 特別受益の持ち戻し免除とはなんですか?
特別受益の持ち戻しは、相続財産に特別受益分を加えて相続分を算定する方法です。
被相続人が「持ち戻しをしなくてもよい」と遺言などで意思表示している場合、持ち戻しは免除されます。
つまり、特別受益を計算せずに遺産分割を行うことになります。